Señor Kei "ANTIGUA REPORT"  (No.7)
( 渓さんの「アンティグア・レポート」)



注: 文中の斜体字は今回の掲載にあたって注釈などを追加したものです。

***** 第 七 回 *****

シンボル、黄色と赤、etc...

15 de Septiembre 1997

 今日の敬老の日は如何お過ごしになられましたか?連連休で旅行に、スポーツ観戦に、テレビでごろ寝と充分休養をおとりになったことと思います。当地グアテマラは今日が独立記念日で学校がお休みでやはり三連休でした。それなりにいろいろと計画はあったのですが、土曜日から風邪をひいて昨日の日曜日は39度近い熱のため一日中ベッドの中でした。風邪薬では治らず、私のマドンナ達が心配して訪ねてくれるのですが、熱のほうは上がったり下がったりで結局、日本を出発する前に医者である私の甥が用意してくれた抗生物質で今日昼頃になってようやく平熱に戻りました。明日から又元気よく通学できることと思います。今回は今日の独立記念日に因んでグアテマラ共和国の象徴(シンボル)についてお話したいと思います。


<<シンボル>>

国家について

 テレビのコマーシャルの中で、上空からの遠景に沃野の中の小学校が見られます。画面は次第にズームアップしやがて校庭に整列した生徒たちが映ります。彼らは国旗を前にし胸に手をあて国歌を斉唱しているのです。私が小学生の頃はごく当たり前のことでしたが、今の日本では絶えて久しく見られなくなった光景です。私には羨ましいような、そうでもないような気もします。この国歌は100年前の1897年3月14日中米博覧会の開会式があったコロン劇場に於いて国家としての第一声をあげました。しかしその後一部に表現の粗さが指摘されそれを改正する目的で1934年文法学者ホセマリアルアノや他の著名なグアテマラ文芸学会員の働きで現在の国歌になったものです。

国旗と国の紋章について

 国旗の下地は青というよりスカイブルー、空色が両サイドに、真中に純白を置いた構成となっています。空色は文字通り天国の入口でもある空を表し、白は人々の汚れなき心純潔を表現しています。白地には紋章が描かれています。1821年グアテマラ総督府領であったグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカの5地域がスペインから独立し、中米連邦共和国として発足したものの利害が調和せず、まずグアテマラが連邦離脱を宣言し、グアテマラ共和国を設立しました。その後1871年11月18日ミゲルガルシア将軍の下した政令によりこの紋章が定められました。紋章は栄光と名誉の象徴でもある二枝の月桂樹の内側に国歌の独立と自治権のシンボルとして1871年当時のレミントン印の二丁のライフル銃が交叉し又黄金の剣もその中に交わって見られます。ライフルの上には1821年9月15日自由独立と書かれた黄金の羊皮紙が置かれその肩に国鳥であるケツァルがとまっている中々凝ったものです。元中米共和国で独立記念日をおなじくするホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカ各国の国旗と比べ一番品が良く、威厳があると思うのは私の贔屓目でしょうか。

国花モンハブランカについて

 アルバ品種、学名リカステビルヒナリス。一般的にはモンハブランカ(白い修道女)の名で知られています。この美しい蘭の花はグアテマラの北西部レイナ地区のアルタベラパスで、他の植物と離れて生息しています。多くの蘭のように中心部に形を変えた花弁があり、昆虫によって受粉されます。一つの嚢包にある実の中には百万の種子があるがそれが萌芽するには特定の茸がそばにあることが条件のようです。非情に貴重な品種であり、1934年2月11日付けの行政命令により商業取り引きは禁止されています。私も在留中に是非その美しい姿を見たいと思っております。

国木セイバ

 アメリカ熱帯地帯の最も巨大な木の一つです。グアテマラ共和国全土で見られ、また全アメリカ内でも共通のものとされていますが、1955年3月8日グアテマラ人の植物学権威ウリセスロハスにより国の木として公表され承認されたものです。その幹は巨大であり遥か高く茂る葉は太陽の直射を遮り一本のセイバが1,600平方米の緑陰を作ると言われています。先コロンブス期には特別に重視され、多くの種族の間では神聖な木として敬われセイバの木の下で多くの儀式を行なうという習慣がありました。その実かあらはカポックという綿の一種が採られます。私もティカル遺跡見学の際、セイバの巨大さ、高さに思わず口をアンングリ開けてしまいました。

国鳥ケツァルについて

 グアテマラの通貨呼称であり、紙幣すべての図柄にケツァルが描かれています。その呼称の元になったのが国鳥ケツァルです。紙幣に鳥の名前とは、羽根が生えて飛んでいく、縁起でもないと言われるでしょうが、この国ではそんなことはないようです。ボサボサの頭、黒い目をした可愛い顔、羽根と長い尾は鮮やかな緑色、お腹だけが真紅の容姿は長い間最高に美しい鳥とされています。以前は海抜1,500米以上の密林に数多く生息していたのですが樹木の伐採等によりその数が減少し現在では絶滅が案じられています。首都グアテマラシティからグアテマラ中央部のコバン(コパンではありません)へ行く途中、バスで3時間程のところに、ケツァルの保護区ビオトポデルケツァルがありますがそこに行けば上手くすると見られるかもしれないそうです。グアテマラテコでも滅多に見られないようですが、私は今年中に青い鳥を捜しに旅立ちたいと思っています。その時に駄目ならケツァルの好む実のなる4月~8月にもう一度挑戦したいと思っています。先月旅行したコスタリカ共和国では、首都サンホセからケツァル観察ツアーがでているそうです。

 以上グアテマラのシンボル5つを集めました。ファミリアのラミロ氏からお預かりした資料から乏しい語学力を駆使して(?)翻訳しましたが、資料のほうは膨大なため殆どは割愛しました。マルセロ先生推薦のシンボルも含め他に取り上げようと思ったタイトルを挙げておきます。メキシコ方面より侵略してきたスペイン軍と勇猛果敢に戦い戦死したキチェ族の将、国家の英雄テクンウマン、国の音楽エルソン、国の楽器マリンバなどです。


<<黄色と赤>>

 お堅い話題でしたので少しくだけたお話でしめたいと思います。このアンティグアにも古来より伝承されたインディヘナの漢方薬的な薬も数多くあるようです。一方で人々は薬局を頻繁に利用しているようです。医療制度に問題があるのか、あるいは医療費が高いからでしょうか、市中の開業医院を覗いても日本のように待合室に患者さんが一杯というのはないようです。その代わりといいますか薬局の数はやたら多く目につきます。またお菓子屋さんや雑貨屋さんにも家庭薬的な薬を売っています。
〔実際には評判の病院もあるようです。診察代や信頼度により患者の数も違うようです。国立病院などは診療費は安いのですが、持ちまわりでくる先生がいい加減なことがあったり、治療に必要な薬や包帯などを処方箋にしたがって本人もしくは家族が用意して持ちこまないと手当てをしてもらえないこともあって、よほど緊急でもない限り、お金に余裕がある場合はグアテマラシティの私立病院を利用する傾向があるようです〕
 日本から来てまず下痢に悩まされることがあります。症状が進み腹痛があったり熱がでたりすると、アタバルの片桐さんは「アメーバかもしれないから早くクリニックで診断を受けたほうがいい」と薦めます。医学知識のない我々でもアメーバと聞き、アメーバ赤痢を連想してしまいますが、この場合はそうではなくていわゆる細菌性の大腸炎を指します。直接水は飲まないまでも、気づかないまま生水を使った氷や、ミネラルウォーターのつもりで飲んだ水が実は生水だったりすると、特に旅行の移動中で疲れていたりすると、かかりやすい、しつこい病気のようです。
そして片桐さんの薦めに従い診断を受けに検疫所(クリニック)に行った男の子も女の子も、「あんなカーテンもないところでお尻をだし屈辱的な思いをしたことは無かった」と憤慨します。
 それがいやで処方箋がなくても購入でき、お菓子屋さんでも売っている薬にヨードクロリナがあります 〔他の病気のこともありますから、診断は受けたほうがよいでしょう〕。一錠でも二錠でも売ってくれとても安価な薬ですが下痢症状に対して劇的な効果をもたらします。最初に二錠、後4時間毎に一錠づつと決められているところからすると結構強い薬のようです。そしてこの薬にはちょっとした副作用があります。服用後小便が真黄色になります。黄色といっても一通りの色ではなく傷の消毒に使うリバノール液そのものの色です。下着に染みがつくのではと気になるほどですが一時的なものなので誰も事前に話してくれません。私の場合真夜中の寝惚け眼でしたので、びっくりしたもののそのまま寝てしまいました。次の用足しの時は半減し、その次は殆ど分からなくなりました。後日下痢に悩んだセニョリータ(日本人です)にも勧め、即効で効果があったのですが、副作用について伝えていませんでした。彼女が帰国した後、電話があったのでその時のことを尋ねると、やはりびっくりしたがつい言いそびれていたとの子とでした。
 赤蕪(二十日大根)より少し大きめのレモラチャ(赤い甜菜・砂糖大根)を輪切りにした酢浸けのサラダはなかなかさっぱりしていて美味しいものです。上品に食べないと口の周りまで真っ赤になるほど毒々しいまでも赤い食べ物です。他に色のついた食物では三食の内一回は出てくる茶色というより黒色のフリホーレスがあります。フリホーレス豆を煮た料理です。煮た豆はそのままテーブルにのることもあれば、つぶしたり、こしたりもします。我々の日本人の場合は一見餡子と間違えますが、味付けは塩味です。
 ところで、レモラチャは食べ過ぎた場合大変なことになります。アタバルの片桐さんが食事をしていると学生の一人が飛び込んできて「大変なんです。ちょっと見てください。」と紙に包んだものを差し出しました。「血便になっちゃったんです。」優しい片桐さんは前夜の食事内容を聞き安心するように説明しました。学生の帰った後、片桐さんが食事を続けたかどうかは定かではありません。実は私もこの件で以前にびっくりしたのです。私のファミリアの二人があまり手をつけなかったレモラチャを私は小鉢に半分か2/3程度食べました。ファミリアの二人は二階の寝室で手を叩いて笑っていたかもしれませんが、私は翌朝びっくりしました。ウンチそのものが全体に真っ赤なんです。癌の前歴があるだけに暗然たる気持ちになりましたが、その後は普通になったこともあって何日か過ぎた後片桐さんに聞き(勿論食事時以外ですが)安心しました。本来消化器官は色素のろ過もしているはずで意外なことでした。
 今回黄色と赤の体験を披露しましたので、今度はフリホーレスを三食腹一杯食べて黒の体験(?)を披露したいと思います。
 前段とは変わって大変下品なお話で失礼いたしました。次回は片桐さんも私ももう少し色気のある気の利いた話に登場したいと思います。

発信人 アンティグアの寅さんこと 小泉 渓